2008 |
10,11 |
夕食は、小川町にある、昭和レトロが売りの定食屋さんで、
和風ハンバーグを食べた。
注文したあと、ぼくは聞いた。
「わさび一丁!」
このお店では、和風ハンバーグを「わさび」と呼称しているようなのだ。
たしかにこのハンバーグには、わさび醤油がついている。
肉の上に乗った大根おろしにかけて食べると、かなり鼻にツンとくる、
男気のある代物である。
だがしかし、ぼくは断じて、わさびを食べに来たわけではないため、
注文したものをわさびと呼ばれることには、いささかのとまどいを隠せない。
料理ができあがってきたときには、さすがに、
「和風ハンバーグ、お待たせしました」
と、言われた。
そう、ハンバーグだ。ぼくが食べるのは。
でも伝票をめくってみると、そこにはしっかり
「わさび 一」
と記されている。
一抹の不安がよぎる。
別に、ぼくは、わさびが嫌いなわけではない。
お刺身にはわさびがかかせないし、ハンバーグとわさびの組み合わせだって、
さっぱりして悪いものじゃない。
ただ、ハンバーグの名前がわさびであることに、違和感があるだけなのだ。
それは、たとえれば、
「うちの猫、カバっていうの。」
と、いうようなものではないだろうか。
もちろん、高橋源一郎の『優雅で感傷的な日本野球』には、
という一文があるし、『さようなら、ギャングたち』においては、
などと、言われてもいる。
とはいえ、そのときのぼくはただハンバーグが食べたいだけで、
そういう詩的な意外性なんて求めてはいなかったのだ。
和風ハンバーグなんだから「和風」でいいじゃないか。
なぜに「わさび」なんだ。
もう、夕飯くらい、落ち着いて食べさせてくれてもいいのに。
それから食べ終わってレジに伝票を持っていったとき、
ぼくの不安は的中したのだった。
「へい、わさびで! 780円です」
いや、わさびではない、ぼくが食べたのは。
そう心の中で思った。
夕飯がわさびって、どんなヤツだ。
和風ハンバーグを食べた。
注文したあと、ぼくは聞いた。
「わさび一丁!」
このお店では、和風ハンバーグを「わさび」と呼称しているようなのだ。
たしかにこのハンバーグには、わさび醤油がついている。
肉の上に乗った大根おろしにかけて食べると、かなり鼻にツンとくる、
男気のある代物である。
だがしかし、ぼくは断じて、わさびを食べに来たわけではないため、
注文したものをわさびと呼ばれることには、いささかのとまどいを隠せない。
料理ができあがってきたときには、さすがに、
「和風ハンバーグ、お待たせしました」
と、言われた。
そう、ハンバーグだ。ぼくが食べるのは。
でも伝票をめくってみると、そこにはしっかり
「わさび 一」
と記されている。
一抹の不安がよぎる。
別に、ぼくは、わさびが嫌いなわけではない。
お刺身にはわさびがかかせないし、ハンバーグとわさびの組み合わせだって、
さっぱりして悪いものじゃない。
ただ、ハンバーグの名前がわさびであることに、違和感があるだけなのだ。
それは、たとえれば、
「うちの猫、カバっていうの。」
と、いうようなものではないだろうか。
もちろん、高橋源一郎の『優雅で感傷的な日本野球』には、
猫の名前が『365日のおかず百科』であることについて、わたしはとやかく言われたくない。
という一文があるし、『さようなら、ギャングたち』においては、
「中島みゆきソング・ブック」
それがかの女の名前だ。
などと、言われてもいる。
とはいえ、そのときのぼくはただハンバーグが食べたいだけで、
そういう詩的な意外性なんて求めてはいなかったのだ。
和風ハンバーグなんだから「和風」でいいじゃないか。
なぜに「わさび」なんだ。
もう、夕飯くらい、落ち着いて食べさせてくれてもいいのに。
それから食べ終わってレジに伝票を持っていったとき、
ぼくの不安は的中したのだった。
「へい、わさびで! 780円です」
いや、わさびではない、ぼくが食べたのは。
そう心の中で思った。
夕飯がわさびって、どんなヤツだ。
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